二人の世界オオコウモリ旅行

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zoom RSS 雪の中で冬眠するコテングコウモリ

<<   作成日時 : 2018/08/15 22:40   >>

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森林総合研究所北海道支所の平川浩文さんと道立総合研究機構林業試験場長坂有さんの共著による雪の中で冬眠するコテングコウモリの論文が発表されました。

雑誌: Scientific Reports
著者: Hirofumi Hirakawa and Yu Nagasaka
論文表題: Evidence for Ussurian tube-nosed bats (Murina ussuriensis)
hibernating in snow
DOI(デジタルオブジェクト識別子): 10.1038/s41598-018-30357-1
発表日:8月13日
論文URL: https://www.nature.com/articles/s41598-018-30357-1

コテングコウモリが主に春先に、雪の上にぽっかりあいた穴の中で見つかることは、何度か報告されています。その説明としては、雪の中でずっと冬眠していて、入っていた空洞が雪が溶けると露出して上の空いた穴になり(不運な個体は人間に見つかり)、やがて覚醒して飛んでいくという説(cavity-exposure hypothesis)と、コウモリが冬眠後いったん春先などに覚醒してから雪に降りたって、自分の体温で雪を溶かすことによって穴やへこみをつくったという説(sit-and-sink hypothesis)がありました。そのどちらなのかを論じたものです。

われわれが見つけたときもそうですが、見つけたときには雪の中に穴状になって沈んでいることが多いのですが、sit-and -sink hypothesisのように体温で沈んでいったとすると、6cm沈むには、論文による推定ではコウモリは少なくとも6.4時間は通常の体温の37℃でなくてはならず、この間に8.9-14.0kJのエネルギーを必要とし、これは体脂肪でいうと0.23-0.36gあるいは体重の5-7%になるそうです。コウモリはご存じのように寒いとき休んでいるときは体温を下げてエネルギーを節約する動物です。そんなに長い時間雪の上でじっとしたまま平熱を保つことはありそうにないです。もし体温がもっと下がったら6cm沈むのにもっと時間がかかります。

最初この部分を読んだときに、37℃のコウモリが雪の上に降りたったら、すぐ熱で潜っていきそうな気がして、そんなに時間がかかるかな?と思ったのですが、論文の中にあるように毛皮は断熱作用があるし、休むつもりならいつまでも無駄に体温を奪われっぱなしはなくて、体温を下げるでしょうね。捕獲調査中でもぐずぐずしていると体温を下げてトーパー(休眠)になってしまって、放すときに苦労することがあります。

それよりは秋に雪の表面が柔らかく軽いときにもぐったという方が可能性がありそうです。雪の中にいる間、他のコウモリの冬眠と同じように周期的に目覚めているとおもわれますが、そのときは通常の体温に戻るので、コウモリと接している部分の雪は溶けて、雪の中での位置が下がって空洞はシリンダー状になってその底にコウモリがいることになります。春には表面の雪が解けると上が空いて露出することになります。露出は昼の場合も夜の場合もあるでしょうけど、昼の方が雪が解けるのが速いので、頻繁にあるはずです。日中露出したときにコウモリは日没後までトーパーのままでいて、やがて覚醒して飛んでいって、その後は、夏のように葉っぱのねぐらが使えるようになるまでは樹洞にいるのかもしれません。

ということは日和見的に雪を使っているので、地域によっては樹洞で冬眠するし、積もった雪がすぐ解けた場合は一時的な利用になるでしょう。雪の中でコテングコウモリが冬眠する利点は、
1.水の確保 
2.捕食者から安全 
3.温度が安定(地上近くの雪は温度は0℃近くで安定している。)

オンライン誌でオープンアクセスなので、誰でも読めます。

個人的にはページの最後にあるさまざまな資料の中の、Supplementary Informationの11ページにある、雪が解けてコテングコウモリが外気にさらされる状態になったときに捕食者が気がつくかどうかの実験として、長坂さんが飼い犬のYukiを放してみたが、コウモリから1mと離れていないところを気づかずに歩いて通り過ぎて、走って戻ってくるときに至ってはほとんど踏んづけるほど近くを通ったのに気づかなかったという話が写真入りであって、楽しかったです。

あとSupplementary Informationの12ページ以降に雪の中でコテングコウモリが見つかった22例の紹介があって、どのような人が何をしていて見つけて、どんな反応を示したかも面白いです。ワシタカ調査のポイントに向かう途中の人、野外調査から帰ってきた人、植生調査をしていた人、雪の中を一列で登山している人たち、お寺で雪かきしていた人、スノーシューのグループ、山菜摘みに入った人。

見つけた人の反応も、なんだかわからなくてペン先でつついてみる人、手の上で転がす人、小枝でひっくり返してみた人、連れて帰って暖まってから放す人、手に取ってみたら覚醒してギャーギャー騒ぎ出したので元に戻した人、そのままにして立ち去る人、近くの樹洞に入れる人、息を吹きかけてみる人などなど、コウモリな人ではない例がほとんどなので、さぞ驚いたことと思います。20番目の戸隠は、以前ブログにも書いたわれわれの観察です。

発見場所のKMLファイルもあって、Google Earthで発見場所の環境も確認できます。ビデオも4例見られます。サーモグラフィーによる観察で、飛ぶ前に体温が上昇するようすがわかるスライドショーもあります。

われわれが見つけたときの様子。
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